

サザンシアター
こまつ座
井上ひさし
栗山民也
石母田史朗、朝野雅博、辻萬長、小林隆、石田圭祐、北川響、増子倭文江、
山本道子、藤本喜久子、井上薫、高島玲、眞中幸子、水村直也(ギター)
8月31日まで
03-3862-5941
9月6日 市川市文化会館

撮影:谷古宇正彦
今年は“大東亜戦争”(この前の大戦を日本はこう呼んでいた)が終わり、はや63年の歳月が流れた。日本だけでなくアジア各国を巻き込んだ悲惨な戦争がいまや忘れられつつある。これだいいのだろうか?
その時日本を動かした戦争指導者の軍人、政治家、官僚は、A級戦犯として処刑された者もいるが、B、C級戦犯は、外地で裁判に掛けられ1000人以上も処刑された。弁護士も再審もないまま、無実や冤罪で亡くなった人も多い。
このドラマの主人公は、C級戦犯「人道に対する罪」人の容疑で裁判に掛けられ、死刑になった人物で、「C級戦犯とは何か、、、」を見つめ、問い直す物語だ。
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昭和22年の夏、戦争が終わって2年経った靖国神社近くの小さな愛嬌稲荷神社。ここも空襲でやられ、本殿が焼け残っただけの見る影もない神社になっていた。
神主は牛木公麿(辻萬長)で、一人息子の健太郎は、フィリピンで戦死したとかで一人暮らしだ。この神社は戦前からお面を出しているのが有名で、戦後も食べるために近所の女性、遠藤繁子(増子倭文江)、田中藤子(山本道子)、中村勢子(藤本喜久子)、久松加代(井上薫)、小山民子(高島玲)を使って、境内でお面を製造をしていた。
これだけのあがりでは食べていけず、女性軍は米の買い出しで妊婦姿で帰って来た。腹にぶつぶつ交換で仕入れた米を腹に巻いているので妊婦そっくりになる。
ヤミ米を取り締まる警察も「陣痛が始まったー」と芝居をうてば、検問をパス出来るという趣向だ。地元警察の鈴木巡査(小林隆)にも一升の米をプレゼントして目をつむってもらった。
そんな折、ひょっこり死んだとおもっていた健太郎が復員して来た。彼は乗っていた船が撃沈されたが、運良く米軍に助けられ、捕虜になっていたのだ。
神社の近くに中学の同級生で健太郎とバッテリーを組んでいた今は精神科医をやっている稲垣善治(朝野雅博)も飛んで来て共に生還を祝うのだった。
ヤミ米でうまくいった女性軍は、今度はなけなしの軍資金を持ち寄り、銚子のイワシをトラック一杯買い込んで、神田で売りさばき一山当てようと公麿のアイディアに飛びついたが、公麿は銚子へ行ったっきり帰って来ない。
やがてしょぼくれて帰って来た公麿の話では、警察に見つかりイワシを全部没収されてしまったという。にわか成金の夢を見た女性たちの顔は真っ青。
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けちがついた愛嬌神社にさらに悪いことが起こった。ある日、GHQ(連合軍総司令部、戦後ここが日本をぎゅうじっていた)法務局主任雇員・諏訪三郎(石田圭祐)が来て、戦時中健太郎がガアム島で住人を虐待した疑いで、健太郎を根掘り葉掘り聞きただした。
健太郎はプロ野球のピッチャーもやっていたので、ガアムで島民に野球を教えたが、その時健太郎の投げたボールを受け損なって頭に怪我をしたことを島民に訴えられたのだ。
あげくに健太郎はショックで記憶消失にもなり、その後稲垣の懸命な治療もあってどうやら記憶が蘇ったものの、GHQからの呼び出しに応じたが、もう愛嬌神社に還って来るくることはなかった、、、。
C級戦犯になった者の中に、たまたま呼びやすい日本人の名前者や些細なことで恨みを買い、その弁明すらなく亡くなった人が多数いた。また、外国人の捕虜にゴボウを食べさせたら「木の根っこを食べさせた」と訴えられ、戦犯になった軍人もいた。
戦争とはなんとむごいことをするのだろう。この作品は7年ぶりの上演で、井上ひさし得意のユーモアがあり、笑いが絶えないドラマだが、その奥には戦争で犠牲になった人たちへの鎮魂歌であり、二度とはやってはならない戦争への警鐘を、一市民の目を通して訴えている。
今回「新国立劇場演劇研修所」の研修を終えた一期生、北川響、高島玲、眞中幸子も初舞台を踏んでいる。