目次
演出
劇団
出演
劇場
てけれっつのぱ

俳優座劇場   

文化座   

脚本
原作
問い合わせ

蜂谷涼   

瀬戸口郁  

佐々木愛、有賀ひろみ、阿部敦子、高村尚枝、五十嵐雅子、
小谷佳加、津田二郎、鳴海宏明、佐藤哲也、沖永正志、白幡大介、ほか

西川信廣  

公演日

10月26まで     

03-3828-2216

小樽生まれの女性作家、蜂谷涼が書いた「てけれっつのぱ」という落語に出て来る小説を文化座の佐々木愛が北海道公演の時、書店で目に止め、内容の面白さからぜひ、舞台化したいと言う想いから実現した。

舞台が小樽がメイーンになる芝居は珍しい。明治初期の小樽はどんな所だったのだろう。幕が揚がったので、それでは、、、。

              

西南戦争(明治10年)が終わり、日本の内乱も鎮まった明治14(1887)年のところは北海道の小樽。小樽は港町。内地から開拓に、いる場所がなく流れて来た者、商い、船乗りなど大勢の人が船でやって来て、まるでゴールドラッシュに湧く町になっていた。

そんな町中に「きし屋」という煮売り、代書、髪結い、俥の手配などなんでござれの店があった。この店には三人の女を軸
に年齢もよく分からない男女が入れ替わり立ち替わり出入りする不思議な店だ。はっきりしているのはみんな江戸、じゃない、東京からやって来た者たちだ。

場面は東京のしゃれた囲われ者の家に戻って、、、。あや乃(阿部敦子)は、御維新前まではれっきとした旗本の奥方だったが、夫は上野の山で官軍と戦い戦死してしまった。

生活に困ったあや乃は芸者に出ていたが、官軍のえらいさんの別所鐵太郎(津田二郎)に引かされ囲い者になっていたのだ。この妾宅には芸者の時からあや乃の面倒をみてきた女中のおセキ(佐々木愛)も一緒に住んでいる。

ある日、妾宅のあや乃の所へ現れた鐵太郎は「今度北海道の開拓庁の高官として赴任するからおまえもついてこい!」と言われ、おセキと一緒にはるばる北海道へ渡った。

前からあや乃が好きだった俥曳きの銀次も後を追いかけ、小樽のきし屋のもとで働くようになる。更ににおセキの息子・熊吉(鳴海宏明)と女房のおふく(高村尚枝)も、母親を頼ってきし屋へやって来た。

小樽での仕事がうまくいきだした銀次は、合いの子で金髪のロビン(小谷佳加)と一緒になる。ロビンは髪結いが商売だが、大女で力持ち。この後彼女が実力を発揮するチャンスがでてくるのでお楽しみに、、、。

これまで登場せず、分からなかったが、きし屋にもう一人女が住んでいた。この女は佳代(有賀ひろみ)といいなんと別所の本妻で、彼女も小樽へやってきてきし屋に居候をしている。前に一度だけあや乃の家を訪れたことはあったが、、、。

佳代は薩摩で、別所に持参金目当てに嫁にされたことを根に持っていまでも夫婦仲は良くないし、店も手伝おうとしない。後で彼女の活躍の場があるから乞うご期待。

              

きし屋も順調にいくかと思いきや好事魔多し。土地のヤクザ・高島(佐藤哲也)と顔に傷がある高島の舎弟・平太(白幡大介)が乗り込んできて「ここの土地を引き渡せ」と脅しに来た。

この争いを聞いていた佳代が戸をガラリと開けた。そのいで立ちは鉢巻きにたすき掛け、手になぎなたをかいこみ、はったとヤクザを睨み付け、ぶんぶんなぎなたを振り回した。

危なく斬られそうになったヤクザは「おぼえていろっ」と第一回戦はしっぽを巻いて逃げ出した。だがこれで納まるわけはない。一段落するかしないかとき、あや乃を助け、きし屋をきりもりしてきたおセキが持病の心臓病が悪化、この世を去ってしまう。

きし屋の連中はがっくり。大黒柱のおセキがいなくなってしまったので、その分、とくに労働者に評判のよかった食べ物の味は、誰にもできない。さあ弱った。家事なんてやったことがない佳代なんて「できもうはん」。

そのうちに「官有物払い下げ事件」が起き、鐵太郎は東京へ戻ることになり、あや乃と佳代に「一緒に来い!」。だがきし屋一同こんどは首を縦に振らなかった。

そうこうしているうちにヤクザの高島が子分を大勢連れてきて「土地明け渡し証」に判を付けとおどかした。これをみた熊吉のかみさん・おふくがびりびりと破いてしまった。

と、なれば第二回戦がレフリーなしに始まった。ここでお待ちかねのロビンが実力を発揮して、チンピラども取っては掴み、掴んでは投げ、男どもはケチョンケチョン。続いて佳代がまたなぎなたをブンブン。店内は地震の後みたいにめちゃくちゃ。

ところが敵は汚い。どうしても「きし屋」を落城出来ないのでついに火をつけた!これではたまらない木造のきし屋は、落城、焼失してしまった。万事休す。これから彼女、彼らはどうするんだろう、、、。

最近文化座は「瞽女さ、きてくんない」「月の真昼間」など心にずしんとくる重厚な作品の上演が続いたが、今回「てけれっつのぱ」は、まるで喜劇を観ているようだ。

出演者全員が役の持ち味をたっぷり見せ、淀みがない。維新から明治に移り変わっていく時代に翻弄されながらも、自己の意志でしっかり大地に根をおろして生きていく姿におもわず「がんばれー」と声援を送りたくなるような素晴らしい作品だ。

ちなみに「てけれっつのぱ」とは、どこかで聞いたことがあったと思ったら、落語の「死神」に出て来る死に神を追い払うおまじないの文句だった。舞台の中でも出演者がピンチを乗り越えた時に、思わずこの言葉を発す。これが雰囲気にマッチしているので、笑いを倍加させている。

「官有物払い下げ事件」の号外を読むきし屋の面々

撮影:蔵原輝人 (C)