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劇場
スペース・ターミナル・ケア
紀伊國屋ホール  

俳優座   

坂手洋二  

栗山民也   

阿部百合子、高山真樹、田野聖子、砂糖あかり、森尾舞、小澤木の実、太田亜紀、   
若尾哲平、川口啓史、加藤佳男、星野元信、川井康弘、田中茂弘、松島正芳、薄衣峻平

10月12日まで   

03-3405-4743 日・際日休

撮影:蔵原輝人 (C)

ホスピスとはターミナルケア(終末期ケア)を行う施設のことで、起源は中世ヨーロッパで旅の巡礼者を宿泊させた小さな教会をさし、病気でここから旅立つことが出来ない人たちのケアをしたところから出て、後に介護施設全体をホスピスと呼ぶようになった。この作品はここで“死”を迎える患者たちの日常を暖かく描いている。

              

あるホスピスのロビー。フロア全体が待合室や談話室のように作られ、一角に天体望遠鏡が置かれ、部屋の外はガーデニングがあり、ロビーは夕日に紅く染まっている。このロビーは、いつも患者、医師、看護師集まりホスピスとはおもえないほど賑やで暖かい雰囲気が漂っている。

どんな患者がいるかというと、、、。定年間もなくガンに侵された都築昭次(川口啓史)と付き添いの妻・節子(片山万由美)、家族に邪魔にされた老女の難波春江(阿部百合子)、働き盛りだった林君男(田中茂弘)、ガン診断を受けた初期から緩和ケアを選択した若い女性・大野仁美(小澤木の実)、少年の鹿山淳一(薄衣峻平)は、母親の俊子(佐藤あかり)がここで働き一緒の部屋で寝起きをしている。

一方、医師、看護師たちも紹介しよう。院長でここのホスピスを経営しているが、自分もガン患者の植田修(加藤佳男)、医師の中島恵美(田野聖子)、山本琢也(川井康弘)、荒川哲乗典(若尾哲平)、看護師の坪井美智子(森尾舞)、高野志織(太田亞希)。

医師、看護師たちは病院と違い確実にあと数ヶ月後には死んでいく患者と毎日接し、苦楽を共にしなければならない。

ホスピスでは,患者の痛みを和らげる措置はするが、抗ガン剤の投与や延命のための薬剤使用はしないから見守る医師は、まるで牧師のように患者に接しる。だからここへは若い医者は二の足を踏むのだ。

この人たちの中で、特くに印象的なのは院長で、せっかく苦労して自分が建てたこの施設で、医者から今度は己が末期ガンの患者になってしまう。なんと皮肉な運命なんだろう。

夕食後のロビーで院長は淳一少年を励ますために、このホスピスを宇宙船に見立てて、光りの早さで航行する宇宙船に乗れば、時間は止まっているようで、地球上の100年はあっというまに過ぎてしまう。

そのころには、ガンなんて消滅してしまっているだろうと淳一だけではなく、患者全員にSFの世界に言葉巧みに引き込み激励する。

そして「この一週間誰も亡くなったはいなかったね」と優しく話す。この言葉は患者全員に安らぎとして受け入られていった。

日本ではホスピスは1973年に大坂で誕生した。いまでは各都道府県にも広まったが、先日の緒形拳が肝臓ガンでなくなっている。まだまだガンの撲滅は先の事だ。患者にとってホスピスは、心の拠り所になる大事な所なのだ。

この作品は末期ガンの患者がどうその命が絶たれるまで穏やか過ごせるか、難しい問題に焦点をあてた俳優座演劇陣の真摯な取り組み方が、いっぱいに客席に伝わって来る。