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空ゆく風のこいのぼりの
紀伊國屋ホール

東演  

藤井貴里彦   

磯村純  

笹山栄一、能登剛、南保大樹、星野真広、原野寛之、山田珠真子、  
溝口順子、酒田真弓、流石貴子、小池友里香、古田美奈子、小川由樹枝

10月31日まで

03-3419-2871  

宮崎県野尻町(宮崎市から内陸に30キロほど入った町)に住み、藍染めの工房を主宰し、作家活動をしている藤井貴里彦が、書き下ろした宮崎県の山間の小さな鍛冶屋を舞台にした心暖まる作品で、宮碕弁がたっぷり出て来るので、宮碕出身者には郷愁を誘うかも知れない。

              

ここは宮崎県の山間部にある小さな町、野辺町。この町は高原地帯で、茶、稲作、ビニールハウスには果物、生花を育てている純農村地帯だ。

町にはコンビニ、小型のホームセンター、常連が集まる居酒屋なども揃っている。この町の一角に昔ながらの鍛冶屋があるが、不思議なことに家の庭には一年中鯉のぼりが泳いでいるから、町人はこの鍛冶屋を誰でも良く知っている。

主は日高孝吉(笹山栄一)といい腕の良い職人で、妻の加代(溝口順子)も仕事を手伝っている。ある夏の暑い日のことだった、、、。

OGの岡野ひとえ(古田美奈子)が、風に飛ばされた帽子を探しにやって来た。ひとえは東京の換気扇を作っている会社の主任。五人の仲間と旅行でこちらへ来たが、のんびり温泉に浸かっているうちに他の仲間は出発してしまい。置いてきぼりになってしまったのだ。

のんびりやというか目立たない性格で、容姿とは反対にしゃきっとしたところがない。日高の庭は近所のお百姓が、畑へ行く近道なので、よくここを通る。

愛想の良い日高夫婦が、ポカーンと泳ぐ鯉のぼりを見ていたひとえを引き留め、お茶をふるまった。たぶん息子のひろとし(原野寛之)が早い時に亡くなったので寂しかったのかもしれない。

この町はいま町議選の真最中で、孝吉の息子と同じ年でスパーを経営している深海継道(能登剛)が、選挙カーを運転している弟の栄一郎(南保大樹)を探しに来た。

突然犬小屋から這い出てきたのが彼で、ここの愛犬を選挙カーで運転中ひき殺し、お詫びに犬小屋で謹慎していたのだった。

こんな時、町中に知らせる拡声器は、デートリッヒの「リリーマルレーン」が流れる。これが時報を告げる時計がわりで、ユニークな面もある町だ。

同家に良く姿を現わす人を登場させると、町おこしの計画を練る役場総務の猪野志田篤(星野真広)、採れたての野菜を置いていく気の良い薗田カスミ(酒田真弓)、南の国(温暖化の影響でやがて水没する)から来た交換職員・チーサオ(小池友里香)らも現れる。

              

ひとえは、片方の耳が不自由で、日高夫婦の純朴で人の気持ちがよく分かる態度に感銘、鍛冶屋の仕事を教えてもらうようになった。それから二週間経過。

東京から母親鈴子(山田珠真子)が駆けつけ、さらに会社の同僚の小笠原節子(清石貴子)、高岸由香(小川由樹枝)も来て「帰るように、、、」と連れていこうするが、受けつけない。

日高夫婦の一人息子・ひろとしは5歳の時、友達の継道と嵐の日に近くの山に、落下した隕石を拾いに行ってとうとう行方不明になってしまった。それから日高はいつ息子が帰って来ても分かるように鯉のぼりを揚げるようになった。

のんびりした田舎の町で、“事件”なぞ起らないとおもったらそうでもない。加代がたくわん石を探していたら役場の猪野が町おこしに展示しょうと日高の家にあった“たくわん石”を“隕石”と思い込んで持ち出したり、加代が救急車で移送されたり、継道が健闘もむなしく選挙で落選。

強風で鯉のぼりが強風で行く方知れずになったりと、結構バライティに富んだ“事件”?が持ち上がった。町内紙があったらさぞ賑わしただろう。

それでは、事件“その後”となると、、、。やはり劇場へ行って自分の目で確かめてもらいたい。

東演では前にも藤井貴里彦の作品「浄瑠璃の庭」を上演したが、宮崎の風土に誕生した“癒し”のドラマで、ベテラン俳優の技量が発揮されている。