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空の定義

俳優座   

俳優座劇場プロデュース     

青木豪  

黒岩亮  

松永玲子、名取幸政、浅野雅博、中嶋しゅう、
杉山文雄、津田真澄、塩屋洋子  

12月21日まで   

03-3470-2880  

左から塩屋洋子、名取幸政、浅野雅博、松永玲子

撮影:落合高仁  

人気劇作家の青木豪が俳優座劇場プロデュースのために書き下ろした新作で、抽象画ばかり掛けられた画廊喫茶店に一枚だけ値段が付いていない具象画がある。他のミロのようなのは売り物だが、これだけは別だ。青い空が広がった砂浜に大きなさびた碇を蹴飛ばしている少女の絵がこの物語の謎を握っている。

              

横須賀にある「画廊喫茶 オリベコーヒー」が舞台。オーナーの織部正勝(名取幸政)が一人で店を切り盛りをしている。一人娘の長浜暁子(松永玲子)が近所にいて夫の宏一(浅野雅彦)と共に医者でよくここに出入りをしている。

常連客の河本君恵(津田真澄)が来ていてこどもに教えるため算数の問題を解こうとするがダメ。店に来ていた宏一に援軍を頼む。

そんな最中初老の髭をはやした男・坂崎猛(中嶋しゅう)がふらりと入って来てコーヒーを注文する。

それから男は碇を蹴飛ばしている少女の絵を見つけ「この絵売ってくれないか!」と正勝に言う。すると正勝は「知り合いが描いたもので売ることは出来ない」と答え、「なぜ、この絵が欲しいか」と尋ねると彼もまた「知り合いの女性が描いた絵によく似ているから、、、と。

じつはこの絵は、暁子の母親・加藤未知(塩屋洋子)が若い頃描いた絵だった。

そこへこれまた常連の服部健次郎(杉山文雄)が大きなリックを担いで入って来た。彼はイスラエルから帰ってきて土産を正勝に届けにきたのだ。そしてイスラエルで出会った女性と結婚するのだと上機嫌だ。

続いて暁子も現れるが、なぜか母親の姿が見えない。そのわけは暁子が二歳の時、母親があさま山荘事件(連合赤軍が立て籠もった事件)のTV中継を見ていて「これでは日本はダメになる」と正勝と暁子を置いて活動のために失踪してしまった。

それからは母親とは音信が途切れてしまった。暁子は38歳になるが、これまで子供が出来なかったがいまは妊娠三ヶ月、それにアメリカで免疫の研究で行く話しもある。

二階にあがっていた正勝が降りて来て二人に「実はお父さん、再婚しようと思っているんだ、、、」「最近二階で一緒に暮らしているんだ、、、」。この話に二人はビックリ、目は白黒。

すると相手の女性が二階から降りてきた。話が進んで親戚だけの食事会をしようということになったが、席を立っていた髭男がもどり、未知と目が合ってはっとする。

未知が着替えに二階へ行った後暁子と坂崎は、闘争時代の話をして帰っていったようにみえたが、暫く経って服部が、坂崎の手首を締め上げて店に入ってきた。

彼が言うには「この男が屋根伝いに渡って中を覗いていた!」。坂崎は空き巣に間違いられたのだ。服部は坂崎のカバンをひっくり返すと重いサバイバルナイフ、それに警察手帳が転がり出てきた。

危うく服部が警察に電話しようとしたところ未知が割って入って「私に会いにきたんでしょう」と意外な言葉が飛び出てきた。

一段落した時正勝は暁子に「お母さんだよ、このひとは、、、」と切り出した。そして坂崎が未知を訪ねてきたのは未知の名義でアパートを借り、新しいアジトを作りに来たのと告白する。

これを聞いた未知は捕まりたくなければ逃げろ。もう自分は力を貸すことは出来ないとつっぱねた。また暁子は暁子で未知に亡くなった祖母が母親変わりに育ててくれたこと。16歳のとき正勝が母親が失踪して行った訳も聞かされた、、、と。

これに加えて祖母がいたから寂しくなかったけれど、よくもまあ平気な顔で私の前に出て来られるもんだと恨み節。そこで未知は「やっぱり一人で暮らします。もう彼らの元には戻らないから」と言い、正勝や暁子の側から去って行ってしまった。

三十数年ぶりに会った母と娘だが、本当にグッドバイになってしまうなかどうか、、、。

一見そとめでは普通の家庭、家族のように思われる家も一皮めくれば、それぞれ悩み、苦しむ問題がある。このドラマは、家庭を捨て闘争に走った女の後日談にスポットを当てた作品で、あの頃闘争に没入した人たちは今はどうしているのだろう。そんな思いがふと横切った。

いろいろな劇団に所属している出演者の合作だが、各自の力量がバランス良く演じられている。