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劇場
死の舞踏

ステージ円

円    

A・ストリンドベリ  

台本

安西徹雄   

橋爪功、高林由紀子、藤田宗久、福井裕子、吉田久美            

7月31日まで   

03-5828-0654  

左 高林由紀子 右 橋爪功 

14世紀の半ばから15世紀にかけて全ヨーロッパの人口が3〜5割ほど減少、人間の肌が黒くなりあっという間に死んでいく病気に取り憑かれ、恐怖に突き落とされた時代があった。

そして死の恐怖にかられた民衆が、半狂乱になって踊り狂った。当時この病気の原因は、鼠の媒介で伝染するペストとは分からなかった。

ドイツの画家・ハンス・ホルバインの版画で、多数の骸骨が出て来る気味の悪い絵を思い出す人も多かろう。作者のストリンドベリは、1901年(明治34年)に、この「死の舞踏」のイメージから、死の一歩手前の夫とその妻の複雑な心の葛藤をあからさまに描いた。

              

場所はスエーデンの小島の要塞。街に出るには連絡船、電信機よる連絡が頼りと不便な島に、引退間際の砲兵大尉・エドガー(橋爪功)と妻・アリス(高林由紀子)が、長い間この要塞に暮らしていた。

エドガーとアリスは年が10歳も離れている夫婦で、あと3か月で結婚25周年の銀婚式を迎えようとしていた。かつてアリスは女優をしていて華やかな時代があったが、それも偏執狂のエドガーとの結婚で、破れてしまったのだ。

エドガーはその性格から疎まれ佐官にはなれず、給料のアップもない。あげくにエドガーは心臓発作が度々起きて、倒れ込む回数が増えているが、巌として自ら病院へ行こうとはしない。

アリスはこの夫の姿を見ても平然としていて、相変わらず女優の夢やうだつの上がらないエドガーへの愚痴を毎日のように言い散らす。

ところが心の底から憎しみ合う日があるとおもえば、また、翌日になるとケロリとして夫婦仲が良いこともある。まるで人間不信のダンスをしているようだ。

こんな冷たい北国の風が吹き込むこの家に、島の検疫所長としてアリスの従兄弟・クルト(藤田宗久)が15年ぶりに赴任して来た。

角突き合わせていたエドガーとアリスだったが、クルトがこの家に出入りする度に、二人の態度が変わってきた。エドガーは、クルトを味方に引き入れようとし、アリスはアリスでエドガーに復讐するために、クルトを誘惑する。

あとはお互いに中傷合戦で、他人が聞いたら耳を覆いたくなるようような場面がこれでもかと続く。これで二人に“救い”はあるのか、、、?

アリスだってその気になれば偏屈なエドガーと別れて、新しい道へ進めばいいのに、、、と観ている人は感じるだろうが、この夫婦はそれなりにもがき、苦しみ生きていくのだろう。

100年以上も前にこの作品を書いたスエーデンのストリンドベリは体験者だったかも知れない。長いセリフ劇でこれでもかと愛憎をむきだしにしゃべるエドガー役の橋爪功。

ある時は氷のように夫を突き放し、ある時はイソップ物語の太陽にもなるアリス役の高林由紀子。

15年ぶりに再会した従兄弟夫婦の現状を、なんとか修復させようと行司役を務めるクルト役の藤田宗久。それぞれベテラン俳優が取り組む「死の舞踏」は、貴方に何かを投げ込んで来るかもしれない。覚悟のほどを、、、。