

ル テアトル銀座
二十一世紀歌舞伎組 公演
市川猿之助
横内謙介
加藤和彦
市川右近、猿弥、春猿、弘太郎、笑三郎、笑也、
猿三郎、猿四郎、欣弥の他に金田龍之介
8月31日まで
パルコ 03-3477-5858

パルコ
おもだか
市川猿之助の一門はこれまで、伝統の歌舞伎とは一線を劃した新しい歌舞伎への挑戦を、猿之助の指導で演じて来た。物語りの面白さに加え、スピーディーでエネルギッシュな立ち回りや洋楽器などの使用で、若いフアンや初心者にも好評だった。
1989年には「二十一世紀歌舞伎組」と名付け、「伊吹山のヤマトタケル」を始め、「雪之丞変化2001」、「龍神伝」ほか多数を上演してきた。
今回は中国の四大奇書の中から、江戸時代から日本人にも馴染みのある「水滸伝」を市川猿之助(演出・美術原案)、横内謙介が脚本、演出。「新・水滸伝」と銘打ち上演に踏み切った。10年ぶりの新作だ。
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「水滸伝」は中国の12世紀初期、徽宋皇帝の時代、彼は民衆に重税を掛け遊興に耽った。上がこんな状態なので、役人たちも右へならえで自分の懐のふくらむことに狂奔、国は乱れに乱れた。これに立ち上がったアウトローたちが、“正道”を求め朝廷と戦う物語で、14世紀の明代に創作された。
“水滸”とは水のほとりと言う意味でこの中に出て来る“梁山泊”は、黄河の南岸にあった湖沼地帯。この頃は琵琶湖より大きな湖の中にあった小島で自然の要害になっていた。現在は黄河の移動で、湖は消失しているという。
さて、本筋に戻って。湖に浮かぶ梁山泊の砦を見ながら姫虎(笑三郎)とお夜叉(春猿)が、夕刻話込んでいた。梁山泊の頭・晁蓋(金田龍之介)の命令で、友好関係を保っていた独龍岡(どくりゅうこう)の町から、祝彪(猿四郎)の軍が奇襲
を掛けてくる。またさらに朝廷軍の一個師団も加わっているという情報を事前にキャッチした。
そこで姫虎、お夜叉、王英(猿弥)も戦いの準備を粛々と進めた。梁山泊軍の指揮官は宋江(猿三郎)。参謀格?に林冲
(右近)がいるが、彼はかつて朝廷軍の教官をしていた男だが、奸計に遭いいまは梁山泊に身を置いている。だが飲んべえでいまは役に立たない。
戦が始まったが梁山泊軍は朝廷軍に背後に回られ大ピンチ。それでも梁山泊軍には勇猛な同士がいて囲みを破って全員が戻る事が出来た。
しかし朝廷軍は本腰を入れて梁山泊を潰しにかかると不安を感じた姫虎たちは、林冲に梁山泊を守る作戦を教えてもらおうと頼んだが、その話に我関せずと知らぬ顔。
一方、包囲網を破り、梁山泊軍を生還させた時、男勝りの戦いぶりをみせた祝彪のフィアンセ・青華(笑也)に、猛将の王英は一目惚れをしてしまう。
恋いのもつれから林冲、王英、お夜叉は敵方に捕縛された。朝廷側の大将・髙俅(欣弥)は、かつて目障りだった林冲を冤罪をなすり付け朝廷から追放させた人物で、梁山泊もろともに踏みつぶそうと企んだ。
これに激怒した梁山泊の面々は一致団結して三人の救出に向かう。これまで梁山泊に立てこもった同士は無法集団だったが、信じあえる仲間のために敵軍に突入、あっという間に敵を蹴散らし高俅を追い詰めた。
捕らわれた高俅は「見逃してくれたら皇帝に梁山泊討伐は無用だ」と進言すると命乞をすると林冲は、みんなの反対を押し切って高俅を解放してやった。
戦いが終わった梁山泊では林冲を大将に組織をリニューアルして、いよいよ堕落、腐敗した徽宋軍を破り、天下万民に尽くす義勇軍としその一歩を踏み出すことになる。
彼らは進軍する度に「替天行道」(たいてんぎょうどう)=「天にかわり道を行う」の旗がひらめいていった、、、。
「弱きを助け強きをくじく」。これをテーマにした物語ほど民衆に喜ばれ、拍手をもって迎えられたものはないだろう。今回の「新・水滸伝」もその冴えたるものの一つで、まるで京劇を見ているようなスピードと音楽や立ち回りが楽しい。
見慣れた歌舞伎の演出、演技とは違っているが、歌舞伎の歴史は400年もあり、この間いろいろな試みをして観客を引きつけてきた。猿之助一門が目指す新しい歌舞伎へのチャレンジだろう。次回公演もおおいに期待したい。