アン・チスレット/
キース・ロウルストン
農地の高騰で自分の農地を投機の対象にしたり、土地の高騰をあてにして事業拡大に狂奔したものの、バブルが弾けて自殺や家族離散の悲劇を日本人も見てきたが、この「来年こそ」はそのカナダ版だ。みなさんはカナダでも20年前にこんなことがあったのをご存知でしたか、、、。
アン・チスレット/キース・ロウルストン作で23年前に初演され、今回日本で初めて上演された。訳はバンクーバー在住でかつて商社マンだった吉原豊司。彼はカナダの秀作演目を日本に紹介してきて、アメリカ一辺倒だった日本の演劇界に新風を吹き込んだ。
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時代は1980年代、場所はカナダのオンタリオ州、トロントの郊外、クリントン。100エーカー(12万2千坪)の農地を親三代で築きあげてきたケン・パービス(水谷貞雄)と妻・ヘレン(樫山文枝)の農家。模範となるような家族的な農場を経営してきた。
ところが一時期カナダで、土地があれよあれよという間に高騰した。銀行はチャンス到来とばかり農民に急騰した農地の担保力をもとでに経営の拡大と効率化を図ったらどうだと人の良い農家の庭まで車を乗り入れ手続きのサービスまでしだした。
大きなレンガ造りのケンの家は、ケンの母親=おゝおばあちゃん(披岸喜美子)と三人暮らし。息子のロバート(竹内照夫)は百姓を嫌ってバンクーバーに住んでいる。
ケンはブームをみてトウモロコシを作っても儲からないから子牛の飼育に乗り換えようとおゝおばあちゃんに言うと彼女は、これまでちゃんとやってきたのでケンの話には反対だった、、、。
だが銀行の融資話乗せられ、農民たちは経営規模を拡大したが、インフレを押さえようとカナダ政府の方針で金利が急騰、あげくに農作物の価格が暴落。これを目指した農家は、経営難に落ち込むと今度は農家をよいしょしていた銀行は、手のひらを返すように冷たくなり、担保の農場を差し押さえ出した。ついに自殺者まで出現するようになった。
ケンも銀行の甘言に乗って融資をしてもらったが、今度は返済に追いまくられるようようになる。おゝおばあちゃんの誕生祝い(来年は90歳になる)にケンの息子・ロバートと孫・サンディ(渡辺えりか)がやってくるが、なぜかロバートの妻は、顔を出さない。
返済が出来ないものはリースバックといって土地を売ってもその土地を今度は借りる方法や、農民は投資会社や銀行の社員を入れさせないため実力で阻止するやりかたなど自己防衛に走るが、、、。
そのうちケンの家に警官が帳簿を押収に来るなど険悪な状態になってしまった。
翌年ロバートとやってきたサンディーは、去年とうって変わって農場が好きになり率先して手伝うようになった。またロバートも戻って来て働きたいという。
だがケンは二家族を養うことは出来ぬという。ロバートは5万ドルをだすから共同出資者として迎えてくれと頼み込んだ。そして妻のキムは家庭裁判所に離婚請求をしたという。すれ違いの夫婦で、離婚は時間の問題だったのだ。
おゝおばあちゃんの誕生祝いにはケンの妹・アグネス(田畑ゆり)、夫・エド(杉本孝次)もやってきたが、こちらはトウモロコシの先物取引で儲かり笑いが止まらない。兄妹でも裕福な家もあれば、ケンのような失敗したところもある、、、。
やがて内密にしていた銀行からの借金で、パービス家が代々汗と土にまみれて得た土地は全部に取り上げられてしまった。だが、ケンはやり直しの一歩をヘレン、ロバート、サンディーそしておゝおばあちゃんらと踏みだそうと決心するのだった。
純朴でまじめな農民が、金の魔力に振り回され作品だが、土地に根付いた農民のバイタリティを水谷、樫山がしっかりした演技で表現し、味わい深いドラマに仕上げている。
それにおゝおばあちゃんの披岸喜美子が、水を得た魚のようで圧巻だ。
044-987-7711
吉原豊司

(月〜土 10-18時)



サザンシアター

高橋清祐
左から樫山文枝、披岸喜美子、水谷貞雄
水谷貞雄、樫山文枝、披岸喜美子、横島亘、竹内照夫、
渡辺えりか、田畑ゆり、杉本孝次、若杉民、岩下浩、伊東理昭
民藝
6月1日まで