

自由劇場
四季
加藤道夫
浅利慶太
林光
田邊真也、味方隆司、金田俊秀、日下武史、芝清道、
大徳朋子、関根麻帆、野村玲子、西珠美、秋夢子、ほか
7月13日まで
03-5776-6730 (9:30〜18:00)日・祭休

田邊真也
撮影:上原タカシ
劇団四季の創立を指導し35歳の若さでなくなった浅利慶太や日下武史の恩師・加藤道夫の作品。時代は戦後の混沌としたどこか戦後の新橋や有楽町のガード下を思い出される舞台をセットしてあるが、観客を不思議な世界へ連れて行ってくれるだろう。
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戦後の焼け残された裏街の夜、赤黄色の街灯が頼りなさそうに照らしている灰色の建物の前に、戦闘帽にゲートルを巻いたたぶん復員兵だろう。彼がこの街にはそぐわないサキソホンを吹きながら「思い出を売ります。美しい音楽に蘇る幸福な夢、、、」といい、「思い出の詩を一回百円で書きます、、、」と道行く人に声を掛けた。
思い出を売る男(田邊真也)は、三日間適当な場所を探し続け今晩、店開き?をしたのだ。ここは戦後にあった渋谷のハモニカ横町や、国電が通れば新橋、有楽町みたいところと想像してもらいたい。
最初にの演奏に引かれて声を掛けたのは年端もいかない花売り娘(大徳朋子)。まだ彼女は「思い出」に浸る思い出はなく、客に買ってもらいその客が捨てた花束を、ちゃっかり拾い、それを別の客に売りつける当世風な女が、曲を聞きながら商売に向かった。
次にやって来たのは、ぬいぐるみを着てタイコを叩くへんな広告屋(味方隆司)、いまのサンドイッチマンが彼に「ここで商売をしたければ仁義を切らねばならない」とアドバイスをする。
そこへルージュで唇を真っ赤にした街の女(野村玲子)が、重く暗い影を背負いながら男が吹く「巴里の屋根の下」にじっと聞き入る。彼女は“思い出”をかみしめているのだろう。この曲が終わると元気を出して闇の中へ消えていった。
戦後すぐの繁華街には制服を着た米兵の姿があった。ここへG・I・の青年(金田俊秀)が、故郷に残してきたガールフレンドを思い出して曲をリクエストする。
米兵が立ち去った後にボロ布姿の乞食(日下武史)が来て陽気で、明るい曲を頼み、いまの世の中がいかにくだらないかを語り聞かせる。
時が経つうちに周りがざわつきだした。この界隈の顔役・黒マスクのジョオ(芝清道)が人を殺し、ピストルを持ったまま逃げているという。
ここへあわただしく一人の男が現れた。そう、黒マスクのジョオだ。警官に追われていてサックスを吹く男の上着と戦闘帽を奪い、みずからサックスを吹き出した。
その曲は、さきほど涙を流しながら街の女が聴いていたあの「巴里の屋根の下」ではないかー。男はもしかして、、、と思いジョオに「この曲に思い出はないか?」と聞くと「戦場で記憶を失い覚えがない」と砲弾で醜い顔になってしまったジョオは答えた。
一度は警官をまいて去ったジョオだったが、再度警官が彼を発見して、、、。
戦後の混乱期、闇市へ足を運んだ人たちにはほろ苦い思い出や郷愁を思い起こさせられるドラマで、今年は戦争も終わり早くも63年になる。時の流れの速さをしみじみ感じさせられる。
劇団四季は今年「昭和の歴史三部作」を上演しているが、この作品は、その続編と思われてならない。他の劇団、劇場が手がけない日本人が背負っている“負”の遺産を、若い人たちにも知ってもらおうと取り組んでいる四季に頭が下がる。