「nine」の作者小原延之は、大坂を主軸にいろいろな社会問題を題材として描く作家だが、東京では馴染みが薄い劇作家で、今回俳優座の要請で2年前伊丹で上演した「nine」をさらに練り上げ上演している。題名の「nine」は、戦争放棄を謳う憲法第9条を意識して付けられたそうだ。
いまから3年前の夏、若狭湾に面した街のサービスエリアが20キロと、こじんまりしたFM局、「テトラ・スポット」が舞台。
地域密着形のラジオ局で、カフェ・ボヘミアン、マスター・一ノ瀬悦男(中吉卓郎)の店とスタジオが繋がっていてローカル色たっぷりな局だ。
一見のんびりしたローカル局だが、ここは近くに原発があり、いまも解決していない拉致事件、北朝鮮のミサイル発射とややこしい問題もあり、うかうかしていられない。
今日は夏の恒例、花火大会とあって人気のあるDJ、立花キョウコ(田野聖子)や新入社員・藤堂貴明(八柳豪)、アルバイト・スタッフ・浅井亜美(太田亜希)らは大張り切りだ。
これとは別に、特番で地元の高校生・楠本剛(野々山貴之)が書いたラジオドラマを放送することになった。ところがその日に北朝鮮が核実験を強行した、、、。
狭いテトラ・ポットに代表の茶屋健一(松島正芳)が戻って来た矢先、高校の放送部長でもある楠本剛とその姉・瞳(荒木真有美と放送部顧問で教員の藪本祥子(斉藤深雪)がやって来て放送を中止してくれと言いだした。
なぜかというと、楠本姉弟は隠していたが在日朝鮮人で、まずい日に北朝鮮が核実験をしてしまったのだ。剛は嫌がらせを食らい生涯事件を起こしてしまったのだ。
この間「熊」が出没する事件があって、元テトラ・ポットの記者で外国の戦争を取材したこともある黒田靖史(巻島康一)が帰社してくる。彼はいまは、この局のレポーターをやっている。
また、浅井亜美の恋人で元ここの社員だった松山昌治(蔵本康文)も現れるし、ラジオネーム「9番」も登場、地域密着型のラジオ局内で、戦争、原発、核実験、差別問題など場違いとも思える話題が飛び出し、異様な雰囲気に包まれる、、、。
この作品は2年前伊丹市で上演され、今回東京での上演だ。観ていて気になったのは関西には敦賀の原発があり、差部問題、海を渡れば北朝鮮と、関東の人が考える以上に馴染みだし、ややこしい問題も先祖から伝わって来て皮膚感覚で理解できる。
だが関東の住人はたしては、すんなり理解できただろうか、、、。
座員が熱心に取り組んでいるものの、作者の真意がよく伝わってこないように思う。幕切れに憲法九条の「戦争放棄」を朗読するが、ドラマの流からいってそぐわない気がした。
今年劇団俳優座は創立65周年記念の年で、1月には「村岡伊平次伝」、5月には「蟹工船」と俳優座の実力を見せた。こんどは舞台が若狭だが、若い関西の書き手に登板のチャンスを与えた。創立70年に向けいろいろな面でのチャレンジ精神を忘れないでほしい。