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村岡伊平治伝

俳優座   

俳優座  

秋元松代   

安川修一   

河野正明、小山力也、川井康弘、河内浩、塩山誠司、
西川竜太郎、斉藤淳、林宏和、井上薫、佐藤あかり、
生原麻友美、荒木真有美、浅川陽子、小澤英恵、ほか

1月18日まで   

03-3470-2888  

左 井上薫 右 小山力也

撮影:蔵原輝人 (C)

江戸時代、鎖国で海外へ行かれなかった日本人は、明治になってアメリカや南米への移民、中国大陸や東南アジアへ向かった邦人は数知れない。

その中に長崎県島原生まれで、儲け仕事を求め大陸に渡った村岡伊平治(小山力也)がいた。彼は明治18年香港に行き、それから明治20年には天津の床屋で住み込み店員として働いていた。

彼は愛想が良く、よく働くので店主の島田(河野正明)からも可愛がられていた。そんな時店にやって来た洋装の日本人女性にばったり出会った。

なんと彼女は故郷に置いてきたはずの恋人・しお子(井上薫)だった。いまはしお子はイギリス人の妾になっているという。その境遇を聞き、もう少し待ってもらい一緒に内地に帰ろうと約束したのだ。

ところが客として散髪に来た上原陸軍中尉(林宏和)は、満州視察(スパイとして)の供として同行するようにと有無を言わさず連れていかれた。

しお子との恋いはかえられず、半年後に任務を終えた伊平治には、褒美として日章旗一枚をもらっただけだった。やっとの思いで帰って来た天津にはしお子はもういなかった。


一年後、伊平治はアモイにいた。彼はここで海員宿泊所を開き、顔も売れるようになったが、内地から騙され売られて来た“からゆきさん”が大勢海を渡ってきた。

行き場のない彼女たちは、絞り取られ、病人も続出する始末。義侠心に富んだ伊平治は、彼女らを助け内地に返そうと有り金を出してかばうが、金も底をつき、ヤクザに殴り込みを掛けられ、にっちもさっちもいかなくなった。

伊平治には子分の豚吉(川井康弘)、ぐず吉(河内浩)、市平(塩山誠司)がいたが、彼女らが内地に帰っても白い目で見られるだけと子分たちの進言に乗り、女たちを売り飛ばして南洋開発に尽力し、国家発展に尽くそうと決心した。

それから一年経ち、伊平治はシンガポールで妓楼の経営者になっていた。南洋各地に支店を持ったため“人材不足”になった伊平治は子分たちに内地に行って娘を拐かして来いと厳命、次々と子分たちは内地から女たちに両親のため、お国のためと言いくるめ、万里の波濤を超えて連れ来た。

あるとき南洋視察にきた伊藤博文(河野正明)までが、その活躍ぶりを見にきたが、伊平治は国の発展のためにやってきた「忠君愛国者」であると胸を張った。

伊平治役の小山力也が出ずっぱりで熱演しているのが頼もしい。これからの俳優座を背負っていく俳優になってきた。

子分役の川井、河内、塩山らの存在が肉厚な作品に仕上げ、娼婦の井上、佐藤、生原、荒木らがそれぞれの個性をぶつけ合っていきいきしている。

村岡伊平治は実在した男で、“女衒”として南洋で辣腕を振るったが、けして彼の地で女をひどい目にあわせたことはなかったという。

また、余談だが日露戦争の時、ロシアのバルチック艦隊がシンガポールに寄港したとき、同地にいたからゆきさんたちは、大艦隊を見て「これでは日本が負けてしまう」と身体を売った金を拠出、その金を領事館に届けたいう逸話も残っている。
けして歴史の表面に出て来ない人物を取り上げ、今年俳優座創立65周年記念公演第一弾としたこの作品の上演は、きっとこれから劇団の弾みになるだろう。

終演後フアンサービスのサイン書きとカメラに収まる小山力也(右から4人目)