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劇場
三越歌舞伎

三越    

橋之助、孝太郎、亀鶴、亀三郎、   
壱太郎、新悟、国生、宗生、ほか

9月19日まで   

0120−03−9354   

製作

松竹   

森鴎外:原作 宇野信夫:作・演出  

出演:橋之助、孝太郎、亀三郎、亀鶴、壱太郎、新悟、八重蔵、嶋之丞、大蔵ほか

「ぢいさんばあさん」   
三越劇場は、前の戦争で、歌舞伎座や明治座など歌舞伎を上演する劇場が、空襲で焼失したため、戦災に遭わなかったこの劇場が、戦後直ぐに当時の若手花形役者の活躍する場所として多いに貢献してきた。

最近は「三越歌舞伎」としていまでも若手役者の伸び伸びとした芸を見せてくれる得難い劇場だ。今回は「ぢいさんばあさん」と長唄舞踊の「手習子」と「俄獅子」を上演している。
美濃部伊織(橋之助)は江戸城の警護や、江戸府内を見廻る大番役で番町の屋敷に、美人の妻るん(孝太郎)と生まれたばかりの男の子と幸せに暮らしていた。またこの夫婦はおしどり夫婦といわれるほど仲が良かった。

ある日るんが、腕を怪我した弟・宮重久右衛門(亀三郎)に、屋敷でこんこんと説教をしていた。というのは久右衛門は、京の二条城に一年間勤める事になっていたが、友達と些細なことで喧嘩をして怪我したため、伊織が義弟の代わりに行くことになった。

そんなところへ伊織が戻ってくる。その後から同輩で、碁に負けた下嶋甚右衛門が後をしつこく追いかけてきてもう一番やろうと食い下がった。

けれども明日京へ上るのでそれもあきらめ、久右衛門に悪態をついて引き揚げていった。腹を立てた久右衛門はその後を追おうとしたが、諭され彼も伊織の屋敷を去っていった。

伊織とるんは三年前に結婚したが、その時桜を庭に植えた。まだ桜はつぼみで、来年春にはきっと二人で一緒に花見をしようと約束するのだった。

それから三月後。場所は満月がきれいな鴨川のほとりにある料亭。伊織はある日刀剣屋で、質流れだが立派な古刀を見つけ自分の物にしょうとしたが金額は百三十両。

手持ちの金では足らず、嫌いな下嶋からやむをえず三十両を借り手中にし、親しい同輩を招待してこの刀を披露していた。そして妻のるんから送られて来た桜の花びらを撒いてみんなをうらやませがらせた。

そこへ泥酔してわめきながら下嶋がやって来て「金を貸してやった俺をなぜ招待しないのだ」と絡み出した。さんざんにいやみを言われ、足蹴にされていた伊織はついに堪忍袋の緒が切れ、自慢の買ったばかりの刀で下嶋を斬ってしまった。

やむにやまれぬとはいっても同輩を斬った罪は重い。伊織は越前丸岡藩にお預けに身になりるんは、翌年男の子を病気で亡くし、その後筑前の黒田家へ奥女中として奉公に上がった。

番長の屋敷は、久右衛門が守っていたが、彼も死にその後を息子の久弥(壱太郎)と妻もきく(新悟)が継いでいた。

あの事件から三十七年経った満開の桜を見あげる老侍がいた。彼こそここの主、伊織で罪が許され懐かしい我が家に帰って来たのだった。

そこへ立派な乗り物が止まり老女が降り立った。真っ白の髪になった老女はるんその人だった。夫がお預け御免になったので、彼女も黒田家から暇を貰い帰ってきたのだ。

庭で桜を見つめる老人を見たるんはその老武士が、鼻をこすっているのをみて夫だと分かった。伊織は小さいときから鼻をこするくせがあったので“夫”だと容姿は変われどすぐピーンときたのだ。

久弥ときくに留守の間の礼を言い、今日から新しい生活が始まるのだと大樹になった桜を見ながら、二人は誓い合うのだった。

長い年月離れ放れになっていても惚れ合い、信じ合った夫婦の情愛は少しも変わっていない、いや、さらに深まっている姿に胸をうたれる。

橋之助、孝太郎はこれまで上演されてきた「ぢいさんばあさん」に出演した役者の中で一番若いコンビだが、先輩らに劣らない演技を見せていた。

二、

上 「手習子」

孝太郎の長唄舞踊。娘 おまつが寺子屋の帰りに野辺で、道草をしている様子を少女のあどけなさを見せながらも恋い
を知った娘心を初々しく踊る。

下 「俄獅子」

吉原の仲之町をバックに賑やかな廓の情景を長唄舞踊にしたもので橋之助・国生・宗生父子の共演。国生、宗生が立派に育ってきて将来が楽しみだ。