

世田谷パブリックシアター
シス・カンパニー
長谷川伸
渡辺えり
6月8日まで
03−5423−5906
草g剛、大竹しのぶ、三田和代、高橋長英、篠井英介、高橋一生、
高橋克実、梅沢昌代、市川ぼたん、冨岡弘、神野三鈴、西尾まり、ほか
「瞼の母」といえば、長谷川伸の名作で、年配の人は誰でも知っていよう。ところが今の若い人は、このストリーを知っている人は少ないそうだ。
かつて新国劇や歌舞伎、映画など時の名優が、主人公の馬場の忠太郎を演じ、“股旅もの”の最高傑作に心を動かせられた。
今回はシス・カンパニーが、テレビや映画もそうだが舞台でも躍進めざましい草g剛を抜擢、現代の若者に共感を呼んで貰おうと企画した。どんな忠太郎を見せてくれるだろうか、、、。
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江州馬場宿(現在の滋賀県米原町)生まれの忠太郎は五歳の時、母親が嫁ぎ先から離別され、父親も十三歳で死別、たった一人で生きてきた。
堅気の世界には住めず、裏街道の渡世人として三十余年の人生を歩んで来たのだ。生き別れた母親が恋しかったのだろう各地を彷徨い、母の面影を追い求めていた。
瞼を閉じれば、幼い時に別れた母が浮かび上がって来る。それがせめてもの慰めなのだ。
舞台は金町の瓦焼きの家。ここにやくざになった半次郎(高橋一生)が、同じやくざの二人に追われて逃げ込むように帰ってきた。彼はここの息子だが渡世人に憧れ家を出奔した男だ。
母親のおむら(三田和代)と妹のおぬい(西尾まり)が半次郎を、必死になって追っ手からかばおうとするが、見抜かれ、斬るか斬られるかの死闘となった時、半次郎の兄貴分、忠太郎(草g剛)が駆けつけ、危ないところだった半次郎を助け、日立のおじの所へ逃がしてやった。
江戸へ戻った忠太郎は、母親と同じ年恰好の女を見れば、自分の母親ではないか、、、と聞いて回り、銭をせびる老婆(篠井英介)に一両の金を渡し、小商いでもしろと諭すのだった。
尋ね、探し、ようやく江戸でも有名な料理屋「水熊」の女将が、生みの親・おはまであることが分かった。
まるで宙を飛ぶような思いで、水熊のおはまに会いに行った。ところがおはま(大竹しのぶ)は、取りすがろうとする忠太郎を見て、水熊の財産でもゆすりに来たのかとけんもほろろの相対ぶり。
「五歳の時に別れた忠太郎だ」と言い、これまでの経緯を細かく説明するが、娘のお登世(市川ぼたん=團十郎の長女)もいるし、三十年も会っていない忠太郎にはなぜか肉親の情愛も沸かない。
忠太郎は、おはまの相対ぶりをみて、たかりに来たのかと察し、彼女の前で、万が一母親が貧乏して暮らしに困ってはいないのかと大事に貯めていた百両の金を見せても「忠太郎かー。逢いたかった」の言葉すら言わなかった、、。
肩を落とし水熊を去る忠太郎を亡き者にして、水熊に入ろうと企む素盲の金五郎(高橋長英)や忠太郎を殺して金を貰おうとする浪人の鳥羽田要助(篠井英介)らの黒い影がうごめく。
忠太郎が出て行って取り返しがつかないことをしたと気がついたおはまは、お登世と一緒に、声を枯らして呼びながら忠太郎の後を追うのだったが、、、。
草g剛初めての股旅もの出演。「瞼の母」を長年探し求め、“再会”を待ち焦がれ、会った実母の態度に裏切られた心情をたっぷりみせてくれる。また團十郎の長女市川ぼたんもお登世役で、舞台初出演。次回も期待したい。
シス・カンパニーの北村明子さんは「二年前のうちの公演に草gさんに『父帰る/屋上の狂人』で出てもらい好評だったので、チャレンジしてもらいました」。
「今の若い人は『瞼の母』をほとんど知りません。観終わって話しを聞くと『こんな素晴らしい作品があったんですね』と興奮されて帰っていくのです。良い企画だとおもっています」と言っていた。

若い女性客で賑わう「瞼の母」