劇団文化座の代表、佐々木愛の舞台生活50周年記念公演として佐々木愛主演の「こんにちは、おばあちゃん」を六本木の俳優座で上演している。
この作品はカナダの翻訳劇だが、日本でも急速に老齢化が進み近年一人住まいの老人、特に女性が多くなってきているが、このドラマは国境を越え、老人がどのように生きていくのか、どのように生きていくのが良いのだろうか?誰でも必ずやって来る“老い”の問題にスポットを当て、観客に老後の指針を教えてくれる心温まる物語だ。
舞台は1988年に冬季オリンピックが開かれたカナダのカルガリ。ここに住むフィップス夫人(佐々木愛)は、元大学で数学を教えていたがいまは退職、ハイウエーに面した大きな邸宅に一人侘びしくその日一日を過ごしている。年は70歳だ。
季節は晩秋。広い庭は落ち葉が降り積もっている。庭に出て来たフィップスが、落ち葉を拾い始めたが、「女の細腕」では春になっても終わりそうにない。
そこへ庭に若い男が入って来て彼女ののろのろした動作を見ていたが「一週25ドルで私を雇ってくれたら庭をきれいしてあげます、、、」と話を持ちかけた。
彼は工場の人員削減でクビになり失業中だ。彼の名前はティム(白幡大介)といい近所に、妻のジネット(青山真利子)と暮らしている。
彼女はデパートの苦情処理の仕事をしているが、いつも客の苦情に悩まされ早くこの仕事を辞めたいとぐちり、家庭内もしっくりいってないようだ。
初対面でティムをいぶかっていたフィップスだったが、目の前で落ち葉をみるみるうちに片付けていく様子が気に入り、ティムを雇うことになった。
そのうち落ち葉かきだけではなく、邸内の修理や後片付けもやるようになったとき、彼女からティムは数学を教えて貰うようにもなった。
だがフィップスのボケが進行していてハイウエーに飛出し草を摘み出て、危うくトラックに轢かれそうにもなるが、後でそんなことをしたのをすっかり忘れてしまう状態にもなった。
ジネットは苦情処理の仕事の傍ら夜はコンピュータの学校にいっていたが、成績も良く生命保険会社からコンピュータオペレータとして年俸3万2千ドルで採用する話があって彼女は有頂天になる。
ところが会社はカルガリからもっと内陸へ700キロも入ったレジャイナにある。困ったのはティム、自分がいまジネットとレジャイナへ行ってしまったらボケが進み、一人ぽっちのフィップスを残していかなければならない。さあ弱った、、、。
季節はもう冬に入った。雪かきに来たティムにフィップスは「貴方はクビだ出て行って−」というなぜかというと二人のレジャイナ行きを知ってしまったからだった。そして「私は老人ホームに行くー」。
またフィップスは、ハイウエーにバックを手に双眼鏡を肩に掛け、亡き夫の名前を呼びながらさまよい歩く。それを見つけたティムとジネットはトラックが地響きとクラクションを流しながら通り過ぎる間隙を縫って、フィップスを助け出す、、、。
フィップス役の佐々木愛が、うなりを上げて通り過ぎる大型トラックのクラクションの嵐の中、夫の名前を呼びながらライトに浮き上がって来る姿に「危ない!早く歩道に戻れ!」と手に汗をにぎった。
文化座は佐々木愛の舞台生活50周年にこの作品をよくぞ選んだ。今の老人もこれからの人へもぜひ観劇してほしい。きっと貴方の心への“灯台”になるだろう。