ジョウ・ディピエトロ

加藤健一事務所は専属の劇団員はいない。一つの作品を上演するに当たって加藤が、この芝居にはこの俳優、裏方には誰それがいいだろうとプロジェクトを組むからいつでも同じメンバーが出演するとはかぎらない。長い間この方式で、加藤健一事務所は運営してきた。他の劇団とは一味違うフレッシュな組み合わせを見ることが出来る。

今回は加藤健一の相手役に竹下景子がおばあちゃん役で初出演している。それではイタリア系の心暖まる家族劇を観てみよう。

              

ここはニューヨークの隣、ニュージャージー州に住むイタリア系の母方の祖父・フランク(加藤健一)と祖母・アイーダ(竹下景子)が住む家。フランクは14歳の時、船に一人で乗せられ親戚を頼ってアメリカへ渡ってきた。

アメリカでは大工になって働き、自分の家を建てたが、娘と家族はフロリダへ行ってしまった。この家の二軒隣には娘の夫の両親・ヌンツイオ(有福正志)、祖母・エンマ(一柳みる)がいて日曜日にはしょっちゅうフランクの家にご飯を食べに来る。ヌンツオイもイタリア系なので、食事の時はそれはそれは賑やかなこと。

ある木曜日、孫の30歳にもなるニック(山本芳樹)がやって来た。彼もよくフランクの家に来るがどうも今日は事情がありそうだ。彼はその事情を話そうとするとアイーダばあちゃんがおいしいものを作るからといそいそしとし、フランクじいちゃんもよく来きたとべらべらしゃべりだした。

さらにまずいことに今度はヌンツオイじいちゃんとエンマばあちゃんまでがにやってくる。ニックがしゃべろうとしてもその隙がない。

ニックが来て話そうとした中身は、マーケティングの仕事をしているが、会社からシアトルへ転勤の話があって、シアトルへ行けば昇進できるというものだ。

ようやくニックがシアトル行きをじいちゃん、ばあちゃんにしゃべると「ショック、そんなー」。ニックの両親はフロリダへ、妹はサン・ディゴへ行ってしまい、いまでは肉親は孫のニックだけになっているのだ。うってかわってはしゃいでいた年寄りたちはガックリ。

それでもニックをシアトルに行かせないためのアイディアが閃いた。それはニックにお見合いをさせようとするものだ。数日経った日曜日。いつものようにディナーにやってきたニックはエンマの知り合いの若い女性・ケイトリン(小山萌子)を紹介される。

「行くべきか、行かざるべきか」悩んでいたニックは、発作に襲われ倒れてしまった。そして数日間ニックの家で手当をうけることになってしまった、、、。

ニックは本当にシアトルへ行くのか、ニュージャージーのおじいちゃんやおばあちゃんの所に残るのかどうか、、、。

加藤健一と竹下景子は初の競演で、故郷のイタリア料理を作るのが好きなおばあちゃん役が、とても良く似合う。昨今のぎすぎすした世の中で、心に火を灯してくれた暖かい作品だ。

訳

小田島恒志 
平川大作  

左から山本芳樹、竹下景子、加藤健一   

高瀬久男    

撮影:石川純  

出演

加藤健一、竹下景子、山本芳樹、
小山萌子、一柳みる、有福正志

川を越えて、森を抜けて
劇場

本多劇場   

劇団

加藤健一事務所  

4月2日可児市文化創造センター、4・5日石川県・能登演劇堂  

3月29日まで   

03-3557-0789   

3月31日 亀戸・カメリアホール