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劇場
紙屋治兵衛

近松浄瑠璃「心中天網島」より  

三越劇場   

新派

新派百二十年記念

北條秀司  

補綴

成瀬芳一   

片岡愛之助、瀬戸摩純、鴫原桂、英太郎、  
伊藤みどり、柳田豊、田口守、佐堂克実、  
小泉まち子、片岡松之助、ほか

8月26日まで   

0120-039-354

今年は新派が誕生してから120年になる。新派の名作を今年各劇場で上演してきたが、今月の三越劇場では、近松門左衛門の「心中天網島」を基に北條秀司が、現代的な視点で書き下ろした作品。新派では昭和53年が初演だ。

歌舞伎でよく上演される「心中天網島」は、紙屋治兵衛が遊女の小春に入り上げ、金の算段から破局を迎え、心中の道を選ぶが、近松では小春と女房のおさんは従順な女性として描かれている。

だが、この作品の小春は気丈で男をとろかす女性として登場。おさんと性質が対照的に描かれ、今回は若手の女優の抜てきと歌舞伎界から松嶋屋の愛之助が、治兵衛に初挑戦しているのが見ものだろう。

              

大坂は天満の紙屋治兵衛(片岡愛之助)は、曾根崎新地の遊女・小春(瀬戸摩純)に夢中になり借金を重ねにっちもさっちもいかなくなった。紙の小売り商だからもともと大金があるわけではない。

今日は治兵衛の家に兄の孫右衛門(三原邦男)をはじめ親戚が、治兵衛の不始末をどうするかで相談に集まっていた。ところが主人の姿はない。女房のおさん(鴫原桂)が必死になって言い訳をする、、、。

治兵衛は二年前にも小春に使った金で首が回らなくなり親戚に世話になったのに、今度は他人の手形に判を押し、金貸しに店を取り上げられてしまうピンチになってしまった。

怒ったおさんの伯父・米次郎(片岡松之助)は、ダメな亭主のそばにおさんを置いておかれないと顔は真っ赤。おさんはもう一度助けてくれと懇願、おさんの一途な気持ちに何とかこの急場を親戚が支えることになった。

親戚が去った後、様子を押し入れにいて聞いていた治兵衛が出て来て、まだ残っていた孫右衛門にこってり絞られれた。

              

それから半年経ち、治兵衛はおさんの助けもあって商売に励んだが、季節も良くなり花見囃子が聞こえてくるようにもういけません。またも遊び心がむっくり。小春が家まで押しかけてきて長い間の恨みつらみを言う始末。おさんをごまかし新地の茶屋、河庄へ。これが遊び納めと自分に言い聞かせ上がった。

ここまでならよかったもののそうはいかない。小春の強欲な母親・おかね(小泉まち子)が待ち構えていて「迷惑は掛けないから受け判を付いてくれ、、、」と頭を下げられ治兵衛は金額が書いていない手形に判をペタリ。

小春とはこれっきりと思ったが、貞節だが人形のようなおさんと肉体の魅力たっぷりなお春。またも治兵衛はずるずると深みにはまっていった。

真夏になって治兵衛は金貸し源八(柳田豊)から呼び出しがあった。天神境内の茶店で源八が治兵衛を待っていると女すりのおきん(英太郎)が擦り寄ってきて源八を持ち上げその隙に高価なタバコ入れをしてやったりと掏り取りとった。

当人は全然気がつかない。入れ違いに治兵衛は、源八からおかねの不渡り手形を突きつけられた。自分がうかつに判を押した手形には十二両と書かれていた。

最初に判を付いた時には金額は入っていなかったが、後からおかねが金額を書き入れまんまとだましたのだ。小商人の治兵衛には、一年間の仕入れ金にも匹敵する金額は、とても払えるものではない。真っ青になり呆然とする治兵衛だった。

それから三月経ったが、治兵衛が駆けずり廻って出来た金は三両しかなかった。それが知れて兄にはなぐられるし伯父には「今度こそ離縁だっ」と罵倒され、おさんがまたも詫びをいれ再起を誓う治兵衛だった。

              

そこへ小春が忍んできた。「母親が私を伏見へ売り飛ばすのだ!」と。淀川べりの船着き場で、治兵衛はおかねを発見、怒りに震え怒鳴りつけるが、逆にアホウ呼ばわりするおかねにわれを忘れ首を絞めた。

気がついたときにはもうおかねの息は止まっていた。小春はいったんは治兵衛とおさんとの幸せを祈り、離れていったが、駆け戻りこれを見て、もうこれまでと治兵衛と心中の決意を固めた、、、。

日本一の商いの街・大坂の商人が、なぜこんな馬鹿なことをしたのだろうと前から歌舞伎の「天網島」を観ていたが、人間金だけではなく、男女の間にはこれを超越したそれぞれの“愛”や切ることが出来ない“縁”があるのだ。と、語っているのだろう。

治兵衛の愛之助、小春の瀬戸摩純、おさんの鴫原桂、三人が持ち役を十分に生かし、熱演している。これをバネにして新派の発展に働いて欲しい。

また、女スリの英太郎はこのところ老け役が多いが、今回は若返って生き生きしていたのが印象的だった。

劇場ロビーには新派の女優たちがお客をお出迎え