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十二月大歌舞伎

歌舞伎座

昼の部 

一、高時  

二、京鹿子娘道成寺−
鐘供養の場

三、東山桜荘子 佐倉義民伝



夜の部   

一、名鷹誉石切(なもたかしほまれのいしきり

−鶴ヶ岡八幡社頭の場−

二、高坏   

三、籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)  

富十郎、幸四郎、梅玉、魁春、三津五郎、福助、  
染五郎、段四郎、東蔵、彦三郎、家橘、ほか  

12月26日まで   

03-3541-3131(代)

菰樽も積まれた十二月大歌舞伎 

歌舞伎座は今年の掉尾を飾る師走興行。幸四郎が昼に「佐倉義民伝」で木内宗吾、夜に「駕籠釣瓶」の佐野次郎左衛門を、それに三津五郎が本興行で初めて「娘道成寺」を、夜の部では富十郎が「石切梶原」を「名鷹誉石切(なもたかしほまれのいしきり)と外題を付け、梶原平三景時を演じるのも歌舞伎フアンにはこたえられないだろう。

               

◆ 「高時」 

執権(今の総理大臣)北條高時(14代)は後醍醐天皇を隠岐の島へ流し、最後は新田義貞に責められ自刃したが、闘犬、田楽に熱を入れ暴君であったことが後の世まで語り継がれている。

権勢を誇った高時(梅玉)は、愛犬雲龍をことのほか可愛がっていたが、浪人・安達三郎(松江)に殺されたのを聞き処刑
を命じた。

三郎の母が雲龍に襲われたので、鉄扇で殺しのだが、暴君高時は許すはずはない。この処断を止めに入ったのが大佛陸奥守(東蔵)だがうんとは言わない。

さらに秋田入道(彦三郎)が現れ、今日は執権北條義時の命日でもあると諫言でようやく納得して死刑を思い留まった。愛妾の衣笠(魁春)が、明かりをとりにいって高時が一人になるとどこからか烏天狗が大勢現れ、さんざんに高時をなぶり、ついに高時は気絶してしまった。

この異変に気が付いた秋田入道が天狗を追い払ったが、高時をあざ笑う声が響き渡った。梅玉の高時は初役でその傲慢さがこの活歴劇を生き生きさせている。

◆ 「京鹿子娘道成寺」 -鐘供養の場-

良く知られた「娘道成寺」だが今回は坂東流の振りで三津五郎が踊るのが見ものだ。

今日は紀州の道成寺で鐘供養が行われている。そこへ白拍子の花子(三津五郎)が現れ、新造の撞鐘を拝観したいと所化たち(秀調、右之助、高麗蔵、市蔵、ほか)に頼むと、舞を奉納すれば許すというので花子は、それならばと次々と踊りを披露していく。

やがて花子の表情が厳しくなって撞鐘に駆け寄ると蛇体となって四方を睨みつける。花子は清姫の亡霊だった、、、。
三津五郎の道成寺は、本公演では初めてで踊りの名手でもある三津五郎の「道成寺」は見ものの一つだろう。

◆「東山桜荘子-佐倉義民伝」

徳川時代の初期、藩主の圧政に立ち上がった名主がついには将軍に直訴する物語。

雪が深々と降るここは印旛沼の渡し場。渡し守は甚兵衛(段四郎)で、沼に小舟が一艘もやっている。だが役人たちは強訴に向かう村人を捕らえようと待ち構え、夜には渡し船は鎖でつなぎ錠を下ろせていた。

こんなところへ雪まみれの男が甚兵衛の小屋を叩いた。その男は名主の木内宗吾(幸四郎)で、藩主の堀田家江戸屋敷へ強訴に行った村民の釈放と年貢の軽減を願いに行ったが、年貢の件はかなわなかった。

最後の手段は将軍への強訴だが、それは自分の“死”と引替えを意味する。そこで家族との“別れ”を惜しみに戻ってきたのだった。甚兵衛は宗吾の義挙に感動、鎖を切って船を渡した。その行動は甚兵衛の死罪でもあった。

我が家に帰りついた宗吾は妻のおさん(福助)とこどもたちとの最後の対面をし、雪の降りしきるなか後ろ髪を引かれる思いで再度江戸へ向かった。

ここは上野の東叡山寛永寺。今日は四代将軍家綱(染五郎)が参詣する。宗吾は警護の目を盗んで将軍のそばへ擦り寄り直訴。老中の松平伊豆守(彌十郎)は直訴状をそれとなく懐中に仕舞い込んだ、、、。

この狂言の幕開きで、雪が降りしきる「印旛沼渡し小屋」のシーンが出て来るが、雪と寒々しい渡し小屋の情景は、歌舞伎が作り上げた哀しい世界をたっぷり見せてくれ、宗吾と甚兵衛の会話は思わず涙が出て来る。

また「木内宗吾内の場」の宗吾と最後の家族の対面は、情愛のこもった場面。幸四郎、福助、それに甚兵衛役の段四郎が、たっぷりベテランの技を見せてくれる。

               

◆「名鷹誉石切」-鶴ヶ岡八幡社頭の場-

富十郎の定紋(鷹の羽八ツ矢車)に因んで外題が「名鷹誉石切り」となった。石橋山で挙兵した源頼朝を破った平家方の大庭三郎(梅玉)、俣野五郎(染五郎)兄弟が鶴ヶ岡八幡宮へ参詣にやって来た。

続いて梶原平三も現れた時、ここへ青貝師六太夫(段四郎)と娘の梢(魁春)が大事そうに刀を持参し、大庭に急に金が必要になったので買い上げてくれと頼み込んだ。

大庭は直ぐに買おうとしたが俣野が待ったを掛け、刀の目利きとして有名な梶原に鑑定を頼んだ。承諾した梶原はじっと刀を目利きし、無銘だがまれに見る名剣だから手に入れた方がいいと勧めた。

そこで大庭はいくらかと六太夫に言うと「三百両を出して欲しい}と答えた。ところが俣野は「試し切りをして確かめろ」と兄にアドバイス。

梶原はそれでは二つ胴(二人の罪人を重ねて)が切れるかどうか試したらいいとの助言で、罪人二人を引き出すように命じた。そこへ奴鷹平(鷹之資)が書状を持ってきて大庭に渡す。それは頼朝が衣笠の城に立て籠もったという内容だった。
びっくりした一同だったが、そのまま試し切りを続行しようとしたが、罪人が呑助(家橘)しかいない。六郎太夫は梢を家に帰し自分がその身替りをかって出た。

梶原が刀を振り落ろしたが切れたのは呑助だけ。これをみた大庭と俣野は、刀はナマクラだと梶原に毒ついてその場を去っていった。

金策ができなくなった六郎太夫は切腹しようとするが、これを梶原をおしとどめ、じつは自分が手加減を加えたので、刀のせいではない。そして三百両は自宅で払うというのだった。

そして銘刀の証かしに手水鉢を真っ二つに切ってみせた、、、。富十郎の力感があり、情けを知るもののふの演技は見事だ。

◆「高坏」

歌舞伎舞踊にもタップダンスが取り入れられている、、、なんてご存じでしたか?

桜が爛漫の嵯峨野。ここへ花見見物に大名某(友右衛門)が家来の次郎冠者(染五郎)と太郎冠者(高麗蔵)を連れてやって来た。

枝振りの良い桜の下で、大名は酒盛りをしようと言い出し、次郎が持参した盃をじかに土の上に置いたので怒りだし、高坏を持ってくるように命じた。

ところが次郎は“高坏”とは何かを知らない。そこで大名は参詣している間に高坏を買って来るようといいその場を去っていった。

困った次郎は仕方なく「高坏買いましょう」と大声をあげると「高足売りましょう」と声が聞こえてきた。その声の主は高足売(彌十郎)で、次郎が高坏を知らないとみた高足売は、次郎を騙し高足を買わせようとご機嫌をとった。

持ってきた大名の酒を二人は飲みだし、酔いつぶれた次郎をほおっておいて高足売は、何処かへ消えていってしまった。戻ってきた大名と太郎は次郎を起こし、高坏はどうした?と問い詰めるとこれが高坏だと高足を差し出した。

あきれた大名と太郎は、次郎を扇子で叩いたが、酔いの回った次郎は「これが高坏だー」と言い張り、ついに高足を履いてタップダンス?を踊り始めた、、、。軽やかな染五郎のダンスが面白い。

◆「駕籠釣瓶花街酔醒」

この狂言が始まると客は暫く場内には入れない。なぜか?それは場内を真っ暗にしておいてぱあっと照明が点くとそこは桜が満開の華やか吉原の仲之町になるからだ。演出効果たっぷりといったところ。

そこへやぼったい上州の絹商人・佐野次郎左衛門(幸四郎)と下男の治六(段四郎)が客引きの誘いに乗ってやってくる。これを見た立花屋長兵衛(彦三郎)が、良く吉原を知った人と来るように忠告された。

宿へ帰ろうとすると兵庫屋九重(東蔵)の花魁道中が通りかかり、その美しさにびっくりする次郎左衛門だったが、さらに続いて今全盛の兵庫屋八ッ橋(福助)が通りながらにっこりしながら次郎左衛門に振り返った姿は、まるで絵から抜け出て来たようで、次郎左衛門はどぎもを抜かれてしまった。この出会いが後の次郎左衛門を狂わす。

その後次郎左衛門は、惚れた八ッ橋のもとへ通いつめた。彼は顔がアバタで、女に好かれるタイプではないが、金払いが良く女たちにも親切だからいつの間にか「佐野のお大尽」とよばれるようになった。

だがまずいことに八ッ橋の親代わりになっている遊び人の釣鐘権八(市蔵)がいて、次郎左衛門から金の引き出しに十日にあげずたかりに来ていた。

今日も金目当てに立花屋へ来たが、長兵衛の女房・おきつ(魁春)に意見され、引っ込んでいった。権八には何か思案があるらしい。

これと入れ替わるように次郎左衛門が、同業の丹平衛(錦吾)、丈助(幸太郎)を連れてきて自分のもてっぷりを見せつけた。

一方権八は大音寺前にある繁山栄之丞(染五郎)の家に八ッ橋が身請けされると腹いせに注進におよんだ。栄之丞は八ッ橋の間夫(情夫)で、八ッ橋の仕送りで優雅な暮らしをしている男だ。

話を聞いた栄之丞は、兵庫屋で向い八ッ橋に俺をとるか次郎左衛門をとるかと責め、俺ならば次郎左衛門に愛想づかしをしろと強談判。

ついに次郎左衛門は仲間がいる座敷で「身請けなんてまっぴら」と八ッ橋に赤恥をかかされてしまった。悔し涙の次郎左衛門は同業者にも馬鹿にされ、治六と一緒に吉原を後に宿へ帰って行った、、、。

それから四ヶ月が経ったある日。再び次郎左衛門が吉原へ風呂敷包みを持参して八ッ橋を呼んだ。今日が初回のつもり遊んでくれというので、八ッ橋もほっとして笑顔をみせたが、二人きりになると次郎左衛門はにわかに態度が変わり、その顔は憎しみで張り裂けるようになった。

彼が持参してきた風呂敷包みは、妖刀駕籠釣瓶で、次郎左衛門はギラリと鞘を払い八ッ橋目がけて、、、。

幸四郎が見染で、魂が抜き取られた様な表情、愛想づかしでの屈辱感、それに殺しで駕籠釣瓶の切れ味にほれぼれする演技は見逃す事は出来ないだろう。