
六本木の俳優座5Fに劇団の稽古場があるが、ここを利用して1991年から俳優座LABO公演が、定期的に開かれている。本公演では出来ない実験的な作品を発表するのが特徴だ。今回は愛知県・東海市在住のスエヒロケイスケが書いた「犬目線/握り絞めて」を上演している。
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古くなって壁にシミがでている公営住宅「猫が洞荘」のエレベーターホールが舞台。ホール前には管理人室と向い合った場所に倉庫がある。後で分かるが、この倉庫が重要な役目をする、、、。
ある日、若い男・フリーターの桃原硬太郎(渡辺聡)がおずおずと周りを気にしながらしきりに倉庫を窺っている。彼は小児性愛犯罪の前科があって、現在保護観察中だ。
管理人のiニ友則(田中壮太郎)は、コスプレで女の衣裳を着たり、兜をかぶったり不審者を見ても我関せず。またこの住宅には自称自警団の腕章を巻いた踝(くるぶし)康平(三浦英明)、小野寺邦之介(河内浩)が見廻りに来るが、頼りにはならない。
また、家探し先生・五間進(斉藤淳)がいて、おせっかいにも住人を見て回り、おかしいとと思うと耳をドアにあて、動向を探り、あげくにバールでドアをこじ開けるというここには変人、奇人が住んでいる。
脱線したが、ここの窓もない倉庫に寝起きしているのがカウンセラーをやっている小手毬町子(森尾舞)。硬太郎はこの娘の9歳になるシュウへの想いが断ち切れず、密かにやって来るのだった。
なんで町子がこんな倉庫に住んでいるかと言うと元夫の金城耕治(脇田康弘)とシュウの親権争いで、部屋から追い出され行くところもないので、倉庫にご厄介になっていたのだ。
この他の住人には「猫が洞荘」にマドンナの三崎亜由美(福原まゆみ)がいて彼女に恋心を持つ郵便配達員・五十田五郎(伊藤優介)は、亜由美に宛てたラブレターを書いて、毎日のように郵便受けに入れ、踝周平(野々山貴之)〈康平の弟〉は、チラシ配りのペーパーを郵便受けに差し込み、いつも二人はいがみ合っている。
会社員の長坂昭夫(西川竜太郎)は、妻の暁子(岩井なおみ)がいるのに、亜由美に熱中で妻の諫めなんて上の空。
きわめつきは警察官の北村悦成(林宏和)。不審者を取り締まりに来たかと住人がほっとしたのが大きな間違い。彼はどんなはずみでそうなったかは知らないが、硬太郎とはホモの関係で、硬太郎を犯罪者にしないため、管理人室で説得につとめる。
そうそう変人と言えば北村の友達で、写真マニアの大原とも子(小飯塚貴世江)もめったやたらに携帯で写真を撮りまくる。
北村から硬太郎のシュウへの想いをつげられた母親の町子は愕然となるが、、、。
人にはいろいろ“癖”があるが、“笑い”で済むうちはいいけれど、他人に疎外され、蔑視される者はどうやって生きていくのだろう。喜劇の中にネガティブな面が浮かび上がってくる作品だ。
小さな稽古場でも少しも手を抜かず、熱演する出演者たちに喝采を贈ろう。
スエヒロケイスケ

真鍋卓嗣
左から三浦英明、渡辺聡、河内浩、斉藤淳
撮影:棟方慎
9月6日まで
03-3470-2888

俳優座稽古場
俳優座