

俳優座劇場
俳優座
ふたくちつよし
亀井光子
村上博、斎籐深雪、松崎賢吾、桂ゆめ、保亜美、中村たつ、
安藤聡海、みさお、勝恵、長浜奈津子、河野正明、ほか
11月30日まで
03-3405-4743

おおばあちゃん(中村たつ)〈中央〉のアドバイスが、、、
撮影:蔵原輝人 (C)
いま「引きこもり」「いじめ」「パートの首切り」など社会問題になっていて、少し前の日本では考えられなかった難問が急増し、家族の絆さえ危うくなっている。一見外からは分からないし、その解決方も難しい。作者のふたくちつよしは、三世代が同じ家で暮らしている家族の“絆”に焦点を合わせ、共に考えていこうとしている。
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舞台は節分の前日、東京郊外にある松浦家。主人・栄一(村上博)は脱サラをしてタクシーの運転手、妻・鈴江(斎籐深雪)はパートに、長男・敏樹(松崎賢吾)は、中学生の時ひどいイジメが後を引き、大学受験なのに家に引き込きこもりの浪人生。
長女・小枝子(桂ゆめ)は高校2年で優等生、次女・彩香(保亜美)は中学3年で高校受験を控え、はっきり物事を言うタイプだが、成績はいまいち。しんがりは当家のご意見番、大叔母のシゲ子(中村たつ)。以上6人の家族構成。
ある日松浦家の茶の間で、珍しく彩香と同級生の明美(安藤聡美)、香奈恵(みさお)が、勉強をしていた。ところが勉強はそっちのけで、同級生のイジメの話が話題になった。
いつもの夕食の時、突然浪人生の敏樹が「大学受験を止める!」と言い出した。楽な家計ではなくここまで両親はやっと育ててきたのに「そんなー」。必死で説得したががんとして敏樹は譲らず、自部屋に閉じこもってしまった。
その晩、彩香がクラスの男子生徒に言った一言が、その生徒にショックを与え、親が学校へ乗り込んで来て彩香に「謝らせろ」と強談判したとかで。担任の川野教諭が使者となって来訪「とにかく謝ってほしい」と懇願した。
だが、彩香は謝らない。ここでイジメの問題がクローズアップしてくる。実は父親の栄一も会社のイジメに遭い会社を辞めタクシーの運転手になった。
母親の鈴江はパート先の仲間が、上司のイジメで手首を切り自殺未遂になったとか。また小枝子の親友、麻里(勝惠)が警官(斉藤淳)に連れられてやってくる。彼女はイジメから金を巻き上げられ、なくなると援交をさせられ、自殺をしようと橋の上で川面を見つめ動かないのをこの警官に見咎められて松浦家に来た。名前を松浦と名乗ったからだった。
ここで落ち込んでいる麻里のところへシゲ子が現れ、二人だけになった時62年前彼女が数えの18才の若かった頃の体験話をして激励する。それは、、、。
終戦時に満州にいたシゲ子は弟と二人収容所にいたが、毎日のようにソ連兵がやって来てセックスのはけ口に女性を要求してきた。
最初はその道のプロだったが間に合わず、収容所のえらいさんから彼女に「ソ連兵の所へ行ってくれ」と懇願された。ソ連兵にたらいまわしにされ、ボロボロになって戻って来るとみんなから白い目で見られイジメられた。
「でも生きていればきっと良い事だある」と歯を食いしばって生きてきた。弟が持っていたわずかな豆で「鬼は外、福は内」と大きな声で播いたと言い、その日は節分だったと熱を込めて麻里を説得、励ました、、、。
一時は家族の“絆”がバラバラになりそうだったが、、、。松浦家恒例の豆播きははたして今年は出来るかどうか−。
普通の家庭である松浦家の周りで次々と起るイジメの問題を、この家族が正面から取り組んだ姿をドラマにしたが、“イジメ”は被害者だけではなくある時は当人には分からないが加害者にもなることがある。
ただ、この難しい問題に背を向けていては少しも解決への道は開かれないと言っている。
担任の教諭から謝ってくれと言われた彩香の保亜美。その拒絶態度が凜として共感を呼ぶ。満州で輪姦に遭ったシゲ子。同胞からもさげすみやイジメをこらえて生き抜いたシゲ子役の中村たつの語りは、まるで自分が体験したようで鳥肌が立つ。芸の奥深さをまじまじと見せてくれた。