文学座の重鎮で、昨年5月に80歳で亡くなった北村和夫の追悼公演。彼の代表作「花咲くチェリー」の主人公・ジム・チェリーを渡辺徹が演じている。渡辺が北村に最後に会った時「チェリーをやれ!」と言われたそうで、気の弱い、夢がかなわなかったジム・チェリーを渡辺がどう演じているのか、、、。

              

保険会社で外交員として働くジム(渡辺徹)は妻・イゾベル(名越志保)、息子・トム(植田真介)、娘・ジュディ(佐藤麻衣子)の四人暮らしだ。

どうも彼の性格に合わないのか、この仕事が好きになれず、上司とも社内で口喧嘩するほどで、辞職まで考えている。だが家族には一言も「会社を辞める!」とは言わない。家族の生活を思って気の弱い彼は、帰宅すれば樽に仕込んであるリンゴ酒をあおるのみだった、、、。

ジムの故郷サマセットは、イギリスの南西部、リンゴの生産地で小さい頃からリンゴに取り巻かれて育ってきた。だから彼は会社を辞めてリンゴの栽培をしたくてうづうづしていた。これが彼の夢でそれが破局に向かうとは、、、。

仕事も上手くいかず、飲む酒の量が増えるにつれ、家族の中は上手くはずはない。子供たちともギクシャクし、冷たい風が吹き抜けるようになったが、これを必死に食い止めようとするのが糟糠の妻・イソベル(名越志保)だ。

ある日種苗販売のボウマン(石川武)が、ジムのいない間にやってきて、居合わせたイゾベルに、ジムから「数百本のリンゴの苗木を買いたい」という手紙をもらったのでやって来た。と言われたので彼女はビックリ。一言もジムから苗木の購入の件は聞いていなかったのだ。

帰って来たジムは、ウソをつきながらなんとかその場をごまかしたが、、、。

別の日。早く帰って来たジムは家の探し廻りイゾベルのサイフから20ポンドを抜きとった。その前にジュディの友達のキャロル(吉野実紗)と映画へ行こうとしたトムが、やはりイゾベルのサイフから10ポンドをとったが、その金は使わず返したもののイゾベルは、またトムがやるのではないかと紙幣に目印を付けていた。

それを見ていたジムは、知らぬふりをしていたが、ついにジムがとったのがバレる時が来た。実はジムはもう一ヶ月も前に会社を辞めてしまっていて酒代にも困りはて、妻の金に手をつけてしまったのだった。

再訪してきたボウマンにイゾベルは、苗木を買う金はないと断ったが、まだ、ジムはリンゴ園を夢見て必死になってボウマンを引き留めようとする。

やがて家族に会社を退職して無職になったこと、20ポンドを財布から抜きとったこと、嘘を嘘で塗り固めて果樹園作りの幻想を捨てられないジムに対して、20歳でジムと結婚それから25年経ち、トムも軍隊へ入隊が決まってほっとしていたイゾベルはジムに対して、愛想がつき家を出る決意をする。

一生懸命詫びるジムを横目にトランク一つで家を去るイゾベルの後ろ姿に「戻ってくれ!」と言葉を投げつけるが、、、。
彼女が去るのを止めようと大きな火かき棒を曲げ“男”らしさを強調したが、棒は曲げたもののジムは、、、。

最近電車がよく遅延するがその原因は男の飛び込み自殺が多い。その人たちもジムみたいに自分の弱に負けて自殺の手段を選んだのだろうか?観ていて「ジムよがんばれ!」と思わず叫びたくなった。

渡辺徹は、北村和夫の名作に挑戦、プレッシャーを押しのけて重責を果たし熱演だ。またイソベル役の名越志保も実感がこもり、夫婦の絆をたっぷり見せてくれる。

花咲くチェリー

ロバート・ボルト   

訳

坂口玲子   

出演

渡辺徹、名越志保、植田真介、
佐藤麻衣子、石川武、大原康裕、吉野実紗

撮影:飯田研紀  

花咲くリンゴ園の夢を見たチェリー(渡辺徹)だったが、、、

坂口芳貞    

劇場

紀伊國屋ホール  

劇団

文学座   

(北村和夫追悼)

5月31日まで   

03-3351-7265   

10〜18時 日祝休